大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和25年(う)2102号 判決

よつて案ずるに、(一)麻薬は、通常これを所持し、製造し、譲渡したり譲受けたりすることはできないものであるが、その例外として、麻薬取扱者がその業務の目的内で右の行為をすることは許されている外、麻薬取締法により認められた行為を除く他の行為は禁止せられているのである。従つて通常麻薬を所持していれば、犯罪となるもので、これが有罪を認定するには、麻薬を所持、譲渡等をした行為を認定すれば足るもので、犯罪の阻却事由となるすべての事実までも証拠によつて認定する必要はないのである。このことは、通常の刑法犯において心身耗弱でないとか刑事責任無能力者でないとか、正当防衛又は緊急避難でなかつたと云うことは、その主張のない限り、判決で判断することを要しないのと同一に解釈すべきものである。本件において、被告人並に原審弁護人は、被告人が麻薬取扱者であつたとか又は法律で認められた範囲内の行為をしたと主張又は立証していないから、原審が一般の原則により、被告人が麻薬取扱者でなかつたこと及び法定の除外事由なく麻薬を所持していたことを認定したもので、この点について、証拠説明の必要はないものと解すべきである。即ち、被告人側で反証を出さない限り、又は反対の主張を為さない限り、一般的な事項は、これを証明することを要しないものと解すべきものであるから原審が「被告人が麻薬取扱者でなかつたこと」及び「法定の除外事由がなかつたこと」について証拠を挙示しなかつたことは、違法ではない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!